顧客は、実際のデザインの原案や希望の色のサンプル、デジタル版のデザイン画などを提供すればと刺繡糸の色と一致させる事は簡単だと思いがちです。
もちろん言葉で説明されるよりはいいのですが、経験がある刺繍業者やデジタイザーは、それ以外に光が様々な角度で糸に当たることや、デジタイズされたステッチの質感が色の見え方に影響を与える可能性があることよく知っています。
左の3つのサンプルでは、それぞれの文字とボーダーの黄色が微妙に異なる黄色の刺繍糸が使用されているように見えますが、実際は3つともすべてが同じ糸色が使用されています。つまり背景色等によって色の認識が大幅に変わる可能性があり、完成した刺繍の見栄えに影響を与えます。
ライトグレー色の背景を使用したサンプルは、黄色の糸色をより暗くフラットな感じにします。中間の暖かいグレー色は黄色を明るく見せますが、黒色を背景にしたサンプルで感じられるような明るいレモン色には見えません。
顧客提供のプリント、カラーシステムのチップやメーカーが推奨する色の値を元に糸色を一致させることは良いスタート方法ですが、実際に刺繡糸の色を顧客に確認してもらう事は、刺繡糸が顧客が求めている色に限りなく近いか、顧客自身に正確に判断してもらえる一番良い機会です。
コーンに巻かれた状態の刺繍糸や刺繡サンプルを見せることによって、影やハイライトの状態や潜在的な変化を実際に顧客に確認してもらうことは、同じ色の刺繡と印刷の違いを理解してもらうのに最適な方法です。